図書室
図書室は、椅子にきちんと座って、本を静かに一人で読むところ。
その教師は、そんな、時代に合わない思想を持っている一人だった。
図書館関係者は、今、子どもに無理に作文を書かせる事に反対している。そんな事をするから、みんな本が嫌いになるのだと言う。9/1子どもの自殺者が増えるその日、行くとこがなかったら図書館においでと呼びかけた鎌倉図書館の話は有名だ。
あかん!あかん!あかん!と息苦しい学校の中で、図書室には、これから大きな役割があるに違い無い。
相変わらず、僕は、勝手に、図書室の外に「バレンタインの飾り誰か手伝って」と張り紙をする。
休み時間、放課後子ども達がやってくる。
囲いたい!教えたい!与えたい!助けたい!と子どもを束縛するその教師。 その教師のクラスの子達は、その教師に許可を貰わないと図書室に行けないという、子ども権利条約に引っかかりそうなハンディを背負わされていた。
そのクラスの子達は、いつも図書室の窓を覗き込み、僕と目があうと、目をそらす。
そんなクラスの子達が、授業中だと言うのに、ぞろぞろ今日やって来た。
授業中やろー!大丈夫か? 声をかけると、
授業で使うから、動物の本がいるねん。
そっか、じゃあ、その辺やで。
うん。
みんなで、ああだこうだ言っている。聞くと、版画の絵を書くという。
動物って、虫じゃあかんのか? あかんねんって。 虫の方が形も面白いけどなー。 うん。そう思う。 鳥は? あかんねんて。
そっか。 絵本とかの絵の動物の方がやりやすくないん? 残念ながら、動物の写真がのっている本は、そんなに無かった。 あかんねん。リアルなやつじゃないと。写真で動物の顔を正面からで、大きいやつじゃないと。
そっか、あんたらー大変やなー。
そうやねん。いちいちいちいちうるさいねん。 誰ともなく、不満を口にしだした。
私、リスにしよー。 あかんって、リスは難しいんちゃうかって。
私、うさぎにしよー。 あかんって、うさぎは耳が入りきらんのんちゃうかって。
クラスに帰っては、みんな引き返してくる。
像は?あかん! 猫は?あかん! 狸は?あかん!
じゃあ、何やったらええねん!またやー!みんなキレだした。
その時、ライオンはええらしいでー。という情報が。 何でなん?知らん。
大変やなー。いつも。 版画作るより、先生の許可とる方が数倍大変やなー。あんたら。
その後、虎もいいとの情報が。えー猫はあかんのに、意味わからん。吐き捨てるように、みんなが言い出す。
もう俺ライオンでいいわ。私、虎でいいわー。 ほとんどの子は、妥協して帰って行った。
そんな中、2人だけ残った。 俺やっぱり、蛇がいい。。。 そっか、じゃあダメ元で言うてきたら。気合入れて! うん。
すぐに、その子はその教師に連れられ帰ってきた。 蛇は、あかんわーとその教師は言った。気持ち悪いやん!蛇とか虫とか、私嫌いやねん!!!あんなー。強そうないかつい動物がええと思うよ。虎とかライオンとか!
もう一人残っていた女子が、小声で、初めからそう言えやー!!!と、吐き捨て、私ライオンにするっと言って出て行った。
自分は、あまりのバカバカしさに笑ってしまった。ちょうど、その時、そのクラスに娘がいる図書ボランティアさんが、図書室にいた。
学校は、本当あかんあかんですね。っと、気を使って僕は話しかけた。
以前、図書ボランティアで図書室に、クリスマスツリーを置きたいとこの学校にいったら、いろんな宗教の子がいるからと、断られて、やる気が無くなった事を思い出しました。と、そのお母さんは言った。
そのクラスの子が、帰り際図書室に来た。 ライオンと虎だらけになったといった。いつもの事やといった。
そっか、あんたら偉いなーと、僕はしみじみ言った。
多かれ少なかれ、学校とは、理不尽の塊だ。
そこで大人から学べるものは、妥協と我慢と反面教師ぐらいしか無くなってしまっていない事を願う。
大空小学校が奇跡の学校と呼ばれるのは、そういう意味だ。そして、木村元校長の素晴らしさは、それを公立小学校がやるべき最低限の当たり前の事と位置付けた事にあると思う。
今日は、ちょっとカルチャーショックだった。